クサギ(臭木)とは?里山で目を引く白花と群青果のコントラストが美しい落葉小高木

木紹介

はじめに

クサギ(臭木、学名:Clerodendrum trichotomum)は、夏から初秋にかけて白い花を咲かせ、秋には赤い萼(がく)と群青色の果実という鮮烈な配色で山里を彩る落葉小高木です。

葉や枝を揉むと独特のにおいがあり、この性質が和名の由来になりました。
一方で花は甘く上品に香り、チョウやハチを惹きつけます。本記事では、クサギの基本情報、形態的特徴、用途、そしてクサギならではの魅力を、山での観察・解説向けに整理します。

概要

  • 和名:クサギ(臭木)
  • 学名:Clerodendrum trichotomum
  • 分類:シソ科(旧分類:クマツヅラ科)クサギ属
  • 分布:本州(関東以西)〜四国・九州・沖縄;東アジア(中国・朝鮮半島など)
  • 生育環境:林縁・里山の斜面・河岸段丘・休耕地など明るい二次林周縁
  • 樹高:ふつう2〜5m(条件良ければ7m前後)
  • 開花期:7〜9月
  • 果期:9〜11月(赤い萼の中央に群青色の果実)
  • 識別ポイント:大きな対生の葉/揉むと独特の匂い/赤い星形萼+群青の果実

クサギの特徴

対生する卵〜広卵形の大きな葉。縁は全縁〜浅い鋸歯で、触れると柔らかい感触。葉や枝を傷つけると特有の強いにおいを放ちます(防食・虫忌避に関わると考えられる二次代謝物によるもの)。

  • 大きさ:長さ10〜20cm前後、幅はやや広め
  • 基部:やや心形になることが多い
  • 裏面:淡緑色で脈が明瞭

枝先に散房状に多数つき、花冠は白色で、中央から長い雄しべ・雌しべが伸びます。夕方〜夜間に香りが強まり、昆虫(チョウ・ガ・ハチなど)を引き寄せます。

  • 色・形:白い筒状〜漏斗状の花冠+長い雄しべ・雌しべ
  • 香り:甘く爽やか(葉の匂いとは対照的)
  • 萼:開花後に赤〜深紅に色づき持続(観賞価値が高い)

果実

赤く色づいた星形の萼が開いた中央に、金属光沢を帯びた群青〜藍色の小さな核果が1個座る独特の外観。遠目にも目立ち、秋の里山を象徴する風景をつくります。

  • サイズ:果実直径約6〜8mm
  • 色彩:萼=赤/果実=群青色(メタリックな輝き)
  • 生態:鳥類が果実を採食し種子散布に貢献

幹・樹皮

若枝は緑〜褐色でやや軟質。

樹皮は灰褐色で比較的なめらか。

伐採や攪乱後に先駆的に成立しやすく、荒地にも生えやすいため、法面工事や伐採跡地によくみられます。
萌芽や根元からの再生で群落を広げることがあります。

クサギの用途

染色(クサギ染め)

果実は古くから染色に用いられ、紙・布に青〜藍系の色を与える素材として知られます。鮮烈な群青色は天然素材では貴重で、民芸・工芸の彩色に活かされてきました。

観賞・景観

夏の白花と秋の「赤い萼+群青果」のコントラストは山庭・雑木の庭でも映えます。林縁の修景や生垣的な植栽(地域による)で季節のアクセントに。

民俗・生活利用

葉や枝のにおいを利用した虫よけ(忌避)の伝承が各地に残ります。根・葉を煎用した民間薬の記録もありますが、現代医療的な裏づけは限定的なため、安易な自己判断での摂取は避けます。

クサギならではの魅力・識別ポイント

  • 相反する芳香:葉・枝は「臭木」の名の通り強い匂い、花は甘く上品に香る二面性。
  • 唯一無二の配色:赤い星形萼と群青色果実の組み合わせは野山でも群を抜く視認性。
  • 先駆性:攪乱地・伐採地の林縁にいち早く成立し、景観と生態系の回復初期を彩る。

おわりに

クサギは、その名のイメージを覆すほど花と果実が美しい里山の常連樹です。夏の香り、秋の色彩、そして野鳥との関わりまで、季節ごとに観察の“見どころ”が尽きません。林縁で赤い萼の星に群青の実が灯るように並んでいたら——それはクサギに間違いないでしょう。

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