クマはいつ「いなくなる」のか?——冬眠に入る合図・冬の生態・巣穴の場所をやさしく解説

野生動物

2025年大きく話題になった「クマ」。「初雪が降るとクマはいなくなる」という言い回しがあるように、冬になると冬眠することで知られていますが、近年は冬眠しないクマも増えてきています。

積雪が浅い・暖冬・餌不足などの条件では長く活動が続くことがあります。クマの冬入り(巣穴入り)は、日照時間の短縮・気温・餌資源(堅果など)の組み合わせで決まり、年と地域でタイミングが変わります。また、暖冬や人里での餌確保も冬眠しない一例になっています。

この記事を読むと、熊がどのような場合に冬眠するのか、冬眠しない熊に対して気をつけることはどんなことがあるのかがわかります。

どんな「イベント」で冬眠モードに切り替わるのか

  • 日照時間の短縮:秋に日が短くなると、体内リズムが過食期(ハイパーファジア)→代謝抑制へ移行。特にメスでは、11月の日照時間と冬眠入りに統計的な相関が確認されています。
  • 気温低下・積雪の定着:気温が下がり雪が安定して積もると、餌を探すコストが一気に上昇します。浅い初雪だけでは動き続ける例もあります。
  • 餌資源の枯渇:ブナ・ミズナラ・コナラ・クリなどの堅果類が尽きると巣穴入りが進み、逆に人由来の食物が豊富な地域では、冬でも活動を続ける行動戦略が現れ得ます。

地域別の目安

地域・種巣穴入り巣穴から出る補足
北海道(エゾヒグマ)概ね11〜12月3〜5月年・積雪で変動。単独個体が早く出て、親子は遅い。
本州(ツキノワグマ)11月下旬〜12月3〜5月暖冬・堅果不作・人由来餌で遅れることあり。
(参考)雌雄差オスは早く出て、妊娠メスが最も遅い(冬眠期間はオスが短い)。

冬のクマはどう過ごす?

  • 完全停止ではなく「省エネモード」:体温は数℃しか下がらず、心拍や代謝を大きく抑える「冬ごもり」状態。筋力が落ちにくい特殊な生理をもつことも確認されています。
  • 出産は巣穴の中で:メスは1〜2月に巣穴内で出産し、春まで授乳。だから母子は最も遅く出巣します。
  • 春の目覚め:単独の成獣が先行して起き、親子は遅れる傾向。雪解け・気温・早春の餌の出現でタイミングが前後します。

巣穴はどこにある?(地形・構造など)

日本のクマは、斜面の土中・倒木や大木の根元の空隙・岩穴・樹洞など多様な場所を巣穴にします。

白山の調査では、スギの枯れ木の根元尾根筋の地面の穴にササや葉を敷いた寝床が確認されました。アジアクロクマ系では樹洞利用の例も多いと整理されています。

「初雪で冬眠にいく」はどこまで本当?——遅れる条件と注意点

  • 堅果不作(ブナ・ミズナラ等):秋のどんぐりなど堅果の餌不足で冬直前まで低地で活動する例が増えます。
  • 人由来の餌が多い地域:冬でも活動継続する熊が出やすい(家庭ゴミ・果樹・鳥用給餌など)。
  • 浅い初雪・暖冬:巣穴入りは積雪の「定着」で進む傾向。初雪だけではまだ動くことがあります。

人間が安全に活動できる時期

秋(9〜11月):過食期。堅果不作年は人里近くに出没が増えやすい。
初冬(11〜12月):地域差が最大。「雪が本格的に積もるまで」は低地でも遭遇リスクが残る前提で行動。
冬(12〜2月):多くは巣穴で省エネ生活。ただし暖冬・人由来餌がある地域では活動例あり。
早春(3〜5月):単独の成獣から起床。春山の遭遇リスクは再び上昇(芽吹き・残りドングリ・動物死骸を求めて広範に動く)。

まとめ:クマが「いなくなる」は、積雪の定着×餌の終わり×短日化がそろったとき

クマの冬入りは一発の合図ではなく、日照の短縮・寒さ・餌枯渇重なりで進みます。地域・年によって巣穴入りは前後し、暖冬や人由来餌があると冬でも動くことがあります。

「初雪=安全」ではないのが実務的な理解です。山や里での活動では、季節に応じた行動管理(誘因物の管理、見通しの悪い藪での声かけ、早朝・夕方の注意、必要に応じたベアスプレー携行)をセットにしてください。

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