「緊急猟銃(緊急銃猟)」とは?―熊(クマ)・イノシシ出没に銃で備える基礎知識と通報・安全ガイド

緊急 野生動物

近年、住宅地や通学路でクマ・イノシシの目撃が相次ぎ、人的被害を防ぐために早急な対応が必要になる事例が増えています。そこで政府は「緊急猟銃」という仕組みを整え、基本的に猟銃など狩猟行為が認められない場所でも市町村長判断で迅速に対応できるようになりました。

そして2025年10月15日に、全国で初めて「緊急猟銃」によって熊が駆除されました。

本記事は、はじめての方にもわかるように、「緊急猟銃(緊急銃猟)」の意味どんな時に起こるのか実施時に住民が気をつけること通報先、そして遭遇時の安全行動を、信頼できる公的資料をもとに整理しました。


緊急猟銃(緊急銃猟)とは

日本では「鳥獣保護管理法(正式名称:鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)」に基づき、鳥獣の保護と管理、狩猟の安全が定められています。自治体は、生活被害や人身被害を防ぐ目的で有害鳥獣捕獲を行えます。

2025年に、生活圏に侵入したクマなどに対し、他の方法では迅速・的確な捕獲が困難な緊急時に、市町村長が有資格者へ銃猟を委託して実施できる「緊急銃猟」制度を創設する法改正の概要が環境省から公表されました(住民の安全確保のため通行規制・避難指示、弾丸到達の恐れがないこと等の要件を整備)。

どんな時に「緊急猟銃(緊急銃猟)」が検討・実施されるのか

  • 人の日常生活圏に侵入し、人身被害の危険が高いと行政が判断した場合
  • わな等の非致死的・非銃器的手段では的確かつ迅速な捕獲が困難な場合
  • 安全確保(弾丸到達の恐れがない、住民避難・通行規制等)の体制が取れる場合

これらは自治体が警察と連携し、現場の地形・人流・野生動物の行動を総合的に判断します。熊出没への備えや対応の枠組みは、環境省「クマ類出没対応マニュアル」に整理されています。住民側の自衛・予防ポイントも併せて示されています。

実施がアナウンスされたとき、住民が気をつけること

  • 立入禁止・通行規制に従う:現場周辺に近づかない。好奇心での見学や撮影は厳禁。
  • 屋外活動を控える:児童の外遊び・登下校は自治体・学校の指示に従う。送迎や集合場所を変更。
  • 窓・戸締り/屋外の餌資源の遮断:生ゴミ・ペットフード・バーベキューの残滓・コンポストは屋内へ。果樹の落果も片付ける。
  • ペット管理:屋外で繋いでおくなどを避け、散歩は日中の人通りの多い場所に限定。
  • SNSの配慮:リアルタイム位置情報の拡散は混乱や危険を招く恐れ。自治体の公式発表を共有。

クマ・イノシシなどの野生動物を見かけたときの通報先

  • 至急の危険・緊急性が高い:110(警察)へ連絡。
  • 負傷者がいる場合:119(消防・救急)
  • 緊急性が今の所低い:自治体の鳥獣対策窓口。市区町村の「鳥獣被害対策」「環境」「農林」「産業課」担当へ。各自治体ページで連絡先を案内(例:滋賀県長浜市、栃木県那須塩原市など。都道府県ではない)。

連絡時に伝えるとよい情報:場所(住所や目標物)、時刻、種類(クマ/イノシシ/体格)、頭数、行動(移動方向・採食・徘徊など)、人や学校との距離。

もし遭遇してしまったら(クマ編)

環境省の資料では、遭遇時の正解は状況次第で一律ではないとしつつ、以下の基本が示されています。

  • 落ち着いて距離をとる:走って背を向けない。ゆっくり後退し、視線は外しつつ相手の動きを確認。
  • 子グマに注意:近くに母グマがいる可能性。速やかに離れる。
  • 接近・威嚇されたら:その場で立ち止まり、興奮させる行為(大声・石投げ)は避ける。クマ撃退スプレーを携行している場合は適切な距離で噴射。
  • 攻撃に転じた場合:完全な安全策はないが、顔面・頭部を両腕で覆い伏せて致命傷を避けるなどダメージ最小化を最優先に(ツキノワグマは“一撃の後に離れる”事例が多いとされる)。

詳細は環境省「クマ類出没対応マニュアル」該当章の行動指針を参照。
↓北米でのグリズリー対策は↓

遭遇を減らす予防策(季節と暮らしのポイント)

  • 餌資源を置かない:生ゴミ・野菜屑・ペットフード・バードフィーダー・果樹の落果は屋外に放置しない。
  • 鈴・ラジオ等で存在を知らせる:見通しの悪い藪や沢沿い、早朝・夕暮れは特に注意。
  • 単独行動を避ける:複数人・明るい時間帯に。
  • 学校・自治会での共有:出没マップや通報フロー、児童の集団下校など地域で合意形成。

Q&A:よくある疑問

Q. 緊急猟銃のとき、私有地でも入ってくる?

A. 住民の安全確保を最優先に、自治体・警察が必要な規制と連携のもとで実施します。立入や通行規制の案内・広報に従ってください(制度の要件は環境省プレスの「緊急銃猟」参照)。

Q. 目撃写真や動画をSNSに上げてもいい?

A. 現場の安全管理や人出を招くリスクから、リアルタイムの詳細位置の拡散は控えるのが無難です。自治体の公式発表を優先し、住民の安全行動に資する形で情報共有を。

Q. 熊鈴は逆効果にならない?

A. 鈴やラジオは「不意の接近を避ける」目的で有効な場面がありますが、エサに執着した個体や至近距離の遭遇では万能ではありません。見通しの悪い場所・時間帯を避けるなど、複数の対策を重ねましょう(詳細は環境省マニュアル)。


さいごに――「知る・知らせる・離れる」を合言葉に

緊急猟銃(緊急銃猟)は、人命を守る最後の手段として、厳格な要件と安全管理のもとで行われます。私たちができる最善は、
(1)正しい情報を知る
(2)速やかに知らせる(通報)
(3)現場から離れる
地域全体で備えを重ね、被害と事故のないシーズンを目指しましょう。

参考リンク(公的資料)

※最新の運用・通報先・安全指示は、お住まいの自治体や警察の公式発表を必ずご確認ください。

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